グローバルマーケット観察記

第2回 コラム 「クレジット危機に動じない商品市場」を報じたFT
-コモディティ・ブル”は本物か!?-
 
 
 サブプライム問題がメディアで大きく取り上げられるようになったのは、7月中旬に信用格付け会社のひとつスタンダード&プアーズ(S&P)がサブプライム・ローンに関連した金融商品の評価を引き下げるとの観測が出回ってからのこと。これを契機に債券市場ではより広範なリスクの評価替えを求める声が高まっていった。さらに評価の引き下げが現実となってからは、投資家は雪崩を打ったように「より安全な金融商品への逃避」を始めた。主として買われたのは各国の政府債券だが、これが結果として利回りの下落につながった。
 一方、7月中盤から8月末にかけての約1ヵ月半の間に、世界の代表的な株価指数は一様に下落を余儀なくされている。下落率はおよそ7%〜10%ほど。だが、より顕著な影響としてボラティリティー(変動率)の増大が見られる。
同期間の高低差は、S&P500(米)が1550ポイント(P)から1410Pまで約10.0%、FTSE100(英)が6700Pから5800Pまで約13.5%、FTSEユーロファースト300(欧)が1630Pから1440Pまで約11.7%、また日経225(日)は18300Pから15200Pまで約17.0%といった具合だ。
 商品市場への影響はどうだっただろうか。


 FTは8月7日号に『コモディティーのブル(牡牛=強気)が突進(Commodities bulls charge ahead)』と題する記事を掲載、「商品市場はここ最近の金融市場の動揺に比較的反応が薄く、(商品関連の)大多数の指標は過去4週間で大きなプラスを計上した」と述べている。
 具体的には「ダウ工業株指数が1.5%のマイナスを、債券市場が大幅な損を計上した同じ7月に、総額約7000億ドルの資産運用の根拠となっている人気の商品指数“S&P GSCI”は7月に5.5%の上昇」を示した。同様にロジャース国際商品指数、CRB指数も3%を超える伸びを示現。ドイツ銀行のマイケル・ルイス氏は「債券市場問題の商品市場への影響は最小限」とのコメントを寄せている。
 事実、8月1日にはニューヨーク市場のWTI原油価格がバレルあたり78.77ドルの新高値を達成、その後はベースメタルの鉛が過去最高のトンあたり3500ドルを、小麦も11年ぶり高値となるブッシェルあたり6.64ドルをつけた。もうひとつのベースメタル、亜鉛のトンあたり1万6600ドルも記録だ。
 こうしたことからFTは「債券市場の崩落が喚起したリスクへの一般的な嫌悪感は、商品の投資家を少しもおびえさせるにいたっていない」と論じ、さらに米商品先物取引委員会(CFTC)のデータを基に「米国の主要な商品市場の投機建玉は過去最高水準を維持している」と結論した。
 価格の上昇要因となるノン・コマーシャル(非ヘッジ)の7月末時点のネット買い建玉(=投機筋の買いの片建て玉)は84万9000枚。債券危機が取り沙汰される7月初頭の79万6000枚に比べ、減少するどころか逆に6.7%増加していることがFTの主張を裏付けている。
(企画調査部門 小島)

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