JCFIA速報

2008.7.28 産構審商品取引所分科会が再開
 
 
 7月25日、産業構造審議会商品取引所分科会(分科会長=尾崎安央早稲田大学大学院法務研究科教授)が、今年3月以来4ヶ月ぶりに開催された。今回の会合では、4月に公表された「クリアリング機能の強化に向けた研究会」のとりまとめと、6月に公表された「商品取引所分科会・海外商品先物取引等小委員会」の中間とりまとめが報告され、その後、メインの議題である「今後の検討事項(案)」について意見交換が行われた。

 検討事項(案)は、近時の商品価格の高騰、出来高減少に伴うわが国商品先物市場の国際的地位の低下、海外商品先物取引に係るトラブルの急増、環境問題等商品先物市場をめぐる環境変化の中で、産業インフラとしての役割を果たすための市場機能の一層の強化と委託者保護への配慮の視点から、次の5つの論点に分けて提示された。
@透明かつ公正な商品価格形成機能の強化――相場操縦など不公正取引に対する規制のあり方をどのように考えるか。外国規制当局との情報交換を可能とする法整備を行うべきではないか。取引所の自主規制機能のさらなる体制整備の必要性についてどのように考えるべきか。
A委託者トラブルの解消――海外商品先物取引に関する参入規制・行為規制等のあり方についてどのように考えるべきか。国内商品先物取引に係る委託者保護において今後さらなる対応を図るべき事項があるか。
B市場参加者の多様化・利便性の向上――金融商品取引法の「プロ・アマ規制」と同様に、一定のリスク管理能力を有する者を相手方とする仲介行為について、一定の行為規制等を緩和することの是非についてどのように考えるべきか。ラップ口座・IB制度の政策的意義、弊害防止の可能性についてどのように考えるべきか。
C商品取引所の競争力強化――金融・商品取引所間の資本提携等、相互乗入れのための具体的な制度設計をどのように行うべきか。取引所に係る許認可事項について一層の合理化を図るべき点があるか。
Dその他――環境問題など新たな事業リスクについて商品先物市場を利用する制度的対応の可能性についてどのように考えるべきか。OTC取引の制度的対応のあり方についてどのように考えるべきか。ヘッジ目的の利用を促進し、わが国産業のリスク対応能力を強化するためには、どのような方策が考えられるか。

―― 市場振興が最重要課題 ――
 これら検討事項に対し、多くの委員から市場の振興を最重要課題とすべきとの趣旨の意見が述べられた。まず、渡辺好明東京穀物商品取引所理事長は、「当分科会の最大の課題はマーケットの不振をいかに回復させるかであり、『市場振興』が検討の視点の最重要課題。それができなければ産業インフラ機能は果たせなくなる」と発言。市場運営に関して「魅力ある商品の開発・上場ができるよう、上場の認可制を届出制等に改め、品揃えに自由度を与えること」、「農産物についてもOTC取引を可能とすること」を求めた。また、IB制度については、「清算参加者の純資産額要件の引上げによって業態転換を迫られるが、他社清算の実現可能性は限りなくゼロに近い。取次ぎに加えて、IB制度の導入に主務省・業界一体となって取り組むべき」と、その必要性を強調。さらに「JCCHを清算手数料だけで運営していくのは清算参加者の現状からすれば困難であり、利子を充てることも必要。違約担保財源の積増しについては、利子の課税繰り延べを真剣に考えるべき」と述べた。この点については、家森信善名古屋大学大学院経済学研究科教授も、「未来永劫必要な違約担保財源を数年で積み立てるというやり方はありえない」とし、「税制上の配慮が必要」と同調した。
 南學政明東京工業品取引所理事長も、「市場の活力の復活を念頭において議論する必要がある」とし、「新規上場にスピード感をもって対応できるよう、上場商品は総会決議を要する定款でなく業務規程で定めること」「排出量取引を商品取引所でも上場できるようにし、取引所間の競争条件を同じにすること」などを求めた。
 高井裕之住友商事理事金融事業本部副本部長は、「日本の先物市場は世界から完全に取り残されており、現在は規制について議論するより、取引促進を議論すべき」と発言。「価格高騰で投機への批判が強いが、スペキュレーション(投機)とマニピュレーション(相場操縦)が混同されている。規制すべきはスペキュレーションではなくマニピュレーションだ。過度なスペキュレーションは現行で規制は可能」と指摘した。また「CO2排出量等の上場を可能とすべき」、「OTC取引は取引所取引と相互補完的役割を持ち、OTC取引を取引所取引でヘッジする等多層構造で発展していく」とOTCの推進を求めた。
 また、加藤雅一先物協会会長は、「商品先物市場は重要な産業インフラであることを大前提に議論すべき」と強調。「世界の投機マネーが日本市場に入ってきていない。これを改善すべき」と指摘するとともに、「ラップ口座、IB制度については十分に議論してほしい」と要請した。
 産業インフラとしての視点からは、平井茂雄新日本石油常務取締役から、「石油の卸売価格の市場連動性を導入する動きが広まっている。またPEC(石油産業活性化センター)が資源エネルギー庁の委託を受けて「国内先物市場の調査専門部会」を設けて国内石油市場のあり方について検討している。これらの動きに共通することは、価格の透明性が以前にも増して重要となっていることであり、石油価格の透明性を強化するために、流通業者やディーラーが共有できる価格指標が必要であり、取引所に上場する石油製品の品揃え(油種)を増やしてほしい」との意見が述べられた。

―― 国内商品先物取引のトラブルは減少、海先は規制強化を ――
 委託者トラブルに関しては、佐藤広宣カーギルジャパン穀物油脂本部穀物グループ統括部長が、「日本の商品先物市場は「不振」と「不信」の2つの「フシン」がある。後者は海外商品先物取引の悪いイメージが原因だが、国内先物から撤退した者の逃げ場になっているのではないか」と指摘し、早急に海外商品先物取引の規制を法制化すべきと述べた。
 大河内美保主婦連合会副会長は「取引内容を理解していない素人を勧誘して参加させることは問題であり、不招請勧誘の禁止を検討課題にすべき」と発言し、唯根妙子日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任理事もこれに同調しつつ、IB制度について「消費者から見るとますますわかりづらい。消費者が巻き込まれてしまうのでは」と懸念を表明した。
 また、荒井史男日商協会長は、「商品先物取引の機能を発揮できる市場環境を整備し、それと併せて委託者保護を考えるべき」とし、「トラブルの実態を踏まえて、規制対象の特質に合わせて規制の正当性・妥当性・効果を考える必要がある」と指摘した。そして、「国内の商品先物取引については、何度も法改正が行われ、業界は意識改革をし、日商協も努力してきた。まだ十分とは言わないがトラブルは明らかに減少してきている。それをもうしばらく見守ってほしい。他方、海外先物についてはトラブルが急増している実態に鑑みて新たな対策が必要」との考えを示した。また、いわゆる「プロ」と言われる人たちの取引に関しては一定の規制緩和が適当との意見を述べた。これに対して大河内委員からは、「国民生活センターのデータは「氷山の一角」であり、これの何倍ものトラブルがあると認識していただきたい」との見方が示された。
 海外商品先物取引については、加藤先物協会会長も、「取引員は正規の許可業者であり、海外先物業者と同一視されることは遺憾。海外先物にも国内先物と同等の規制の導入が必要」と指摘。家森委員、高井委員からも、早急に規制すべきとの意見が述べられた。
 さらに、多々良實夫日本商品委託者保護基金理事長は、「過度な規制で流動性が損われており、公正な価格形成に本当に役立っているのか疑問。何でもかんでも保護でなく、自己責任を前提に委託者保護を考えるべき」と指摘した。
 ただ、営業目的で海外市場において行われる取引については、久野喜夫FIAジャパン理事は、今まで以上に自由度を高めるよう求めた。また、同委員は、新規上場の自由度とクリアリングハウス機能の強化は車の両輪であり、リアルタイムで信用リスクエクスポジャーの測定がなされなければ国際競争に勝てないとの認識を示した。
 また、規制のあり方について、家森委員は「年金が取引参加できるようハードルを下げるべき」とし、規制を強化するなら「規定を遵守していればメリットがあるといった何らかのインセイティブを与える法体系にすべき」との考えを述べた。

 同分科会の今後のスケジュールは、8月上旬までに各委員からの意見提出を求め、その後、9月〜11月まで月2回のペースで開催、12月に報告書(案)を取りまとめる予定。

〔文責:先物協会事務局〕
各委員の意見は、先物協会事務局の傍聴メモに基づくものであるため、正確でない箇所がありましたらお詫び申し上げます。


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