 |
|
 |
 |
 |
JCFIA速報
|
2008.9.18
|
産構審商取分科会、海先規制原則強化で一致
国内取引は規制緩和をと、渡辺(東穀取理事)委員
|
|
|
| |
経済産業省と農林水産省は9月12日に産業構造審議会商品取引所分科会(分科会長=尾崎安央早稲田大学大学院法務研究科教授)を開催、海外商品先物取引の規制のあり方などを話し合った。海先取引は近年、「ロコ・ロンドンまがい取引」を中心に苦情が頻発。こうした事態を受け両省は商取分科会に「海外先物取引等小委員会」を設置して海先取引の規制のあり方を集中的に議論、6月末に「中間とりまとめ」を行った。今回はそれをもとに討議した結果、参加委員は原則として規制強化の方向性で一致した。しかし海先市場をビジネス目的で利用している商社や金融機関に所属する委員からは、いわゆる“プロ”投資家の市場利用を妨げない方策を求める声が上がる一方、不招請勧誘禁止の導入やクーリング・オフ問題などを巡っては消費者側委員と市場関係者側委員とで意見が対立した。最後に今後の分科会の審議の軸足について東京穀物商品取引所理事長の渡辺好明委員は、昨年来、審議の前提としてきた国内商品先物市場の状況が激変していることを指摘。出来高が急減している現状では、「国内市場の規制に関する議論はいったん置き、市場振興の道を探るべき」と述べた。
●総論一致と各論不一致
海先取引に関する苦情相談件数は平成18年度から増加し、同19年には前年対比約5割増の1685件となっている。このうち海先オプション取引とロコ・ロンドンまがい取引を合わせた苦情相談は18年度の606件から翌19年には1182件と倍増。また苦情相談の内容は「高齢者を狙い撃ちにするなど悪質な手口が目立っている」(中間とりまとめ)。
海先取引は「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」(海先法)と「特定商取引に関する法律」(特商法)で書面交付の義務づけと不当な勧誘行為を禁止しているが、取り扱い業者の参入規制がなく「業者の実態把握が必ずしも十分とはいえない」状況にある。このため対応が後手に回りやすく、苦情相談件数の急増を認識しながらも「現行法では効果的な規制が困難」と指摘されている。
こうした状況に消費者側に立つ委員は消費者保護の観点から厳格な規制強化を訴えており、商品先物業界側からも「海先業者の悪事が伝えられるたびに同一視され非常に迷惑している」(加藤雅一委員=日本商品先物振興協会会長)と原則規制強化に異論はない。ただしそれは悪徳業者の取り締まりを主眼にした意見で“とにかく規制強化”を訴える消費者側委員と食い違いを生じさせている。
また、そもそも「商品取引所分科会の名称が時代遅れ」(池尾和人委員=慶応義塾大学経済学部教授)という意見もある。理由は、OTC取引の隆盛などデリバティブ取引が「取引所だけで取引されている時代ではなくなっている」こと。このため池尾委員は「金融商品取引法のように、海先法を包含する形で商品取引所法を改正する必要がある」と提案している。
●海先はオンライン取引方式に変わるか
海先小委が打ち出した具体的な提案は以下の通り。
【海先取引規制・中間とりまとめの概要】
|
@
|
規制の拡大(海先法の規制対象を拡大し、類似取引を含め一体的に規制するよう制度整備。営業目的の取引の取扱も検討)
|
|
A
|
事前規制の導入(登録、許可等)
|
|
B
|
行為規制の強化(国内商品取引所法を踏まえ適合性原則を導入、勧誘規制も強化)
|
|
C
|
委託者資産の保全(委託者資産の分離保管を義務化)
|
|
D
|
制度上の課題解決(外務員規制の導入、自主規制機関の検討、責任準備金、民事効、罰則のあり方等)
|
|
E
|
その他(委託者・消費者への情報提供および注意喚起、関連機関の連携、厳格な法執行)
|
@は現行海先法での規制対象の政令指定制度の撤廃で、これにより規制対象外となり得る市場をなくすことが狙い。また同法は規制対象を現物先物取引に限定しているが、現在では現金決済型先物取引、商品指数先物取引、オプション取引等が活発に取引されているため、こうした取引も包括的に規制の対象とする。さらにロコ・ロンドンまがい取引が店頭取引(OTC取引)で行われていること、すでに海外では無体物取引の排出権取引が上場されていることから、これらも規制の対象とする。Aは頻繁に改廃業を繰り返す悪徳業者の排除が狙い。商品取引員同様に許可制とすることが提案された。ここまで@とAに関しては、委員間の意見の隔たりはほとんど見られなかった。
Bは規制強化の大枠では一致したが、不招請勧誘禁止の導入では消費者側委員とその他の委員で意見が合っていない。消費者側委員は、海先取引はそもそも「個人には不向きな取引」(津谷裕貴委員=日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員)、「一般消費者を委託者にすべきではない」(唯根妙子委員=日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任理事)との立場から論じる一方で、その他の委員は「海先市場を活用しており必要な『産業インフラ』である」(高井裕之委員=住友商事理事金融事業本部長、佐藤広宣委員=カーギルジャパン穀物油脂本部穀物グループ統括部長)といった意見に代表されるように、根本的な認識にズレがあるからだ。これに関し日本商品先物取引協会会長の荒井史男委員は「国内公設市場なみに入口レベル(参入)の規制を強化すれば不招請勧誘禁止は必要ではない」との見解を示した。
不招請勧誘禁止議論の本質は、もともと取引への参加を望まない個人をどう扱うかにある。これについてFIAジャパン理事の久野喜夫委員は「オンライン証券の事例が参考になるのではないか」と提案。受動的立場で株の注文を扱うオンライン証券各社は「投資リテラシーの向上にも真剣に取り組んでおり、個人投資家にはこの形態が非常に受け入れられている」と述べた。その結果がネット証券大手5社だけでも「500万口座、実投資家数250万人」につながったとした上で、「海先取引も最終的にはこうした方向に進んでいくだろう」との考えを披歴。この意見には津谷委員も「個人的には外国為替証拠金(FX)取引のようにネット取引を中心として勧誘を伴わない取引があるべき姿」と賛同を示した。
●先物取引とクーリング・オフ
委託者保護の観点から海先法固有の規定として定められている、いわゆる「熟慮期間規定」および特定商取引法の「クーリング・オフ規定」の撤廃も是非が分かれた。
熟慮期間規定は、顧客が「海先業者の甘言に乗せられて安易に取引に参加することを防止するため」に設けられている。むろん商取法に同様の規定はないが、中間とりまとめでは、海先業者に商品取引員と同程度の規制を課した場合には、「目的は相当程度達成されることを前提として、この規定は不要と整理できるのではないか」としている。ロコ・ロンドンまがい取引や海先オプション取引等には、同じ考えに基づき特商法でクーリング・オフが認められているが、こちらも同じ整理だ。
加えて海先取引も国内商品先物取引も、そもそも相場変動を前提とした資産運用行為であり、市場関係者にとって「熟慮期間規定を残すのはとんでもない」(高井委員)という認識は共通している。
ところが消費者側に立つ委員にはそうとは映らない。熟慮期間は「契約上当然のこと」(津谷委員)であり、それは「海先取引がそれだけ危険で難しい取引であるゆえの必然」と主張する。同委員は「自分がもうけた時はそのままで損したらクーリング・オフにする点がおかしいとの声があるが、それは当然。そもそもクーリング・オフは業者の義務であり、業者が不利になるのを契約者に押しつけるのはおかしい。詐欺にあった場合でも、仮に儲かった場合の権利は契約者にあるのだから、(その逆の場合は)取り消し得るのであり、それは問題にならない」としている。唯根委員は「クーリング・オフは身近な制度として定着しており廃止には反対したい」との意見だ。
●海先業者の資金管理調査は困難
Cは委託者資産の分離保管とペイオフの導入の2点にわたる。商取法では両方とも実施されているが、海先取引の場合は委託者資産が国内にあるとは限らない点にそもそもの問題がある。現実問題として証拠金等の委託者資産が海外の金融機関にある場合、主務省や担当団体が調査を実施するには当該国の機関と「協定を結ぶ必要があり、コスト面を含めて非常に困難と日本商品取引委託者保護基金理事長の多々良實夫委員は指摘する。ペイオフについては「前提として業者に参入規制を課した上で資金を積み立てなければ実施は不可能」と述べた。
Dでは自主規制機関の設置が議論にのぼった。中間とりまとめでは、新たに海先業者を設けず、商品取引員が海先業務をできるとした場合、日商協が海先業務の自主規制機関となることに「どう考えるか」と尋ねている。
これについて津谷委員は「日商協が担うかどうかは別として海先業者のための自主規制機関は必要」と主張。これに対し荒井委員は「まだ時期尚早」との見解だ。商品先物業界の場合、自主規制機関が誕生したのは、商取法が制定(昭和25年)されてから約40年後の平成3年。参入規制の導入で、まず業者が整理、淘汰されてからの課題という考えだ。
●洞爺湖サミット議長総括に盛られた透明性向上
【洞爺湖サミット議長総括の一部】
(承前)エネルギー市場の透明性向上の必要性についても認識し、我々は、最近の原油および一次産品価格の高騰の背景にある実需・金融両面の要因に関する分析、ならびに商品先物市場の透明性向上のための各国の関係当局の努力歓迎し、関係当局のさらなる協力を奨励する。
|
このほか今夏北海道で開催された先進8カ国首脳会議(G8洞爺湖サミット)の議長総括を受け、経産省は「原油先物市場の透明性向上策について(案)」と題する資料を説明。当該市場の適正な市場管理のあり方や透明性の向上などについて意見交換した。
これについて東京工業品取引所理事長の南学政明委員は、同取引所では2006年1月から「SMARTS」と呼ばれる最先端の市場監視システムを導入しており、「疑義のある取引があれば関係者からヒアリングする」などの対策を採っているほか、市場取引監視委員会が常に相場動向をチェックしていると説明した。
また今夏にかけての石油価格の高騰では、米国の先物市場規制機関のCFTCが「比較的短時間に」詳細な調査レポートを発表したことに触れ、常に市場における大口取引者の「名寄せ」ができているからだと述べた。米国市場では、名寄せはすでにシステムに組み込まれており、取引商品に応じて報告レベル(建玉枚数)が決定されている。いったん報告レベルに達した取引者は、ヘッジャーであるかスペキュレーターであるかに係わらず、解除条件を満たすまで監視下に置かれる。ただし同システムを構築するには「非常に資金がかかる」と述べた。
(文責:先物協会事務局)
|
|
|
|
|
|
|
|