JCFIA速報

2008.10.8 産構審商取分科会、プロ市場化で激論

総論合意もイメージは不一致
 
 
 経済産業省と農林水産省は10月2日に産業構造審議会商品取引所分科会(分科会長=尾崎安央早稲田大学大学院法務研究科教授)を開催、国内商品先物市場の「プロ市場化の推進と委託者トラブルの解消」などをテーマに話し合った。市場構造を現行の個人投資家中心からプロ中心に転換すること、その際にプロとアマで「規制に強弱をつける」ことでは一部の消費者側委員を除いて概ね合意に達した。しかしプロとアマの定義や、プロに対して免除すべき行為規制の範囲などについては十分な議論の時間がなく、次回への持ち越しとなった。またIB(商品取引仲介業)制度の創設では、ヘッジャーに専門的アドバイスをするための機能面では合意が得られたものの、IBそのものの認識に委員間でズレがあることが判明。「具体的な方向性はさらに議論を要する」(尾崎分科会長)こととなった。

 プロ市場化の推進の原点は、本来の主要な取引参加者として期待される当業者や流動性供給者(機関投資家、金融機関等)といったプロのヘッジャーやリスクテイカーを中心とした市場構造とすることで、出来高減少で流動性が低下しヘッジ市場としての機能発揮が困難になっていると指摘されるわが国商品先物市場の機能回復にある。
その実現には、プロが利用しやすい市場の仕組みを構築することが不可欠だ。ところが現行の商品取引所法では、契約の締結前の書面交付や適合性の原則、再勧誘の禁止規定など、商品取引員の行為規制の対象をプロ・アマ区別せず一律に適用している。この一律規制が、商品先物取引に十分な知識と経験を有する者にとって「過剰な規制」となり、「商品先物取引の機能の円滑な利用を損なっている側面があるのではないか」というのが今回の「プロ・アマ規制」導入に関する論点の1つである。
一方で、昨年暮れに公表された産構審の「中間とりまとめ」では、プロ市場化が「個人投資家を排除するものではない」ことを確認しているが、主務省は、委託者トラブルは「この5年間で5分の1程度に減少しているものの依然として相当の水準で推移」しており、このため「引き続き委託者トラブルの解消に向けた取組の推進が必要ではないか」との認識から、プロ・アマの制度設計には個人委託者の保護にも十分な配慮を行うべきではないかとの論点も掲げている。

●プロへの行為規制適用除外●
 プロとアマをどのように区分するかについては、「プロの範囲を過小に設定することで商品市場の円滑な利用を阻害することがないよう留意することが必要ではないか」としつつ、金融商品取引法のプロ・アマ規制を参考とするか、投資家(リスクテイカー)にとっての投資の場、事業者(リスクヘッジャー)にとってのリスクヘッジの場という商品先物取引の機能を考慮した制度設計をすべきかという観点から、個人投資家の年収や取引経験をどう勘案するか、営業目的でヘッジ利用する者をプロとして扱うことについて個人事業主や零細企業保護の観点からどう考えるか、などの論点が提示された。
金商法のプロ・アマ4類型
@プロ限定 ・適格機関投資家
・国
・日本銀行
Aアマになれるプロ ・投資者保護基金
・特定目的会社
・上場会社
・資本金5億円以上の株式会社
Bプロになれるアマ ・@A以外の法人
・匿名組合の営業者等
・知識経験財産に照らして特定投資家に相当する個人(純資産額3億円等)
Cアマ限定 ・B以外の個人
 金融商品取引法のプロ・アマ規制の区分(上表)では、@とAを「特定投資家(プロ)」とし、@は「一般投資家(アマ)」への移行は不可だが、Aは可能としている。また、BとCは「一般投資家(アマ)」として、Bは「特定投資家(プロ)」になれるが、Cはプロになれないと定めている。
こうした論点に対して、まず包括的な観点からプロ・アマ区分で賛成を表明したのは南學政明委員(東京工業品取引所理事長)だった。南學委員は東工取が@コ・ロケーション・システム、ダイレクト・マーケット・アクセス、遠隔地会員制度(リモート・メンバーシップ)など海外トレーダー誘致のためのファンダメンタルズ整備(*注)、A内外のヘッジニーズに応えるための市場調査、B本年末の株式会社移行後のマーケティング部門設置――など、すでにプロ化に向けて具体的に動き出していると説明。このため、プロに対する商品取引員の行為規制適用除外を「切に望む」と述べた。
加藤雅一委員(日本商品先物振興協会会長)も「業者としての立場」からプロ・アマの区別に賛成を表明した。委託者の属性を問わず一律に再勧誘の禁止を課す現行法は、当業者に対する「ヘッジを目的とした市場利用の説明機会を喪失させる可能性がある」との現実的な視点に立っての考えだ。これに対しては、尾崎座長も「当業者に説明できないというのは過剰規制」との見解を示した。
他の多くの委員もプロ・アマ区別には基本的に賛意を示したが、これに真っ向から反対の意見を述べたのが消費者側代表の津谷裕貴委員(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員)だ。津谷委員は、商品先物市場は「プロ市場に特化すべき」との持論を展開。そもそもアマチュアの市場参加を是認しているプロ・アマ議論は「前提がおかしい」とした上で、「プロ限定」市場に移行するまでの暫定措置としてならやむを得ないが、その場合は個人はすべてアマとすべきと主張した。
*注:プロップハウス、アーケード、ヘッジファンドなどの先進的な海外トレーダーはアルゴリズム取引と呼ばれる独自の取引システムを駆使し、1千分の10秒単位の時間を競って売買注文の送信・キャンセルを繰り返している。そうしたシステムへの対応が取引所の国際競争力獲得のひとつといわれる。ダイレクト・マーケット・アクセスはトレーダーが商品取引員(FCM等の清算ブローカー)を介さず取引所のマッチング・エンジンに、直接、注文を送信できるようにする制度。また外国(法)人であるトレーダーの便宜を考えると、日本国内に法人を設立しなくても、東工取の会員になれる制度の設置が望ましく、現実に外国取引所はそうした対応を実現している。それが遠隔地会員制度だ。また遠隔地にいながら1千分の10秒単位の時間を競うトレーダーにとっては、自分の注文発注用コンピューターと取引所のマッチング・エンジンを載せたコンピューターが、物理的に近くに存在することが不可欠。コ・ロケーション・システムはそれを可能にするためのもの。このほか国によっては、別国の取引所が自国の(法)人を会員とすることを規制している場合があり、その際には取引所が当該規則の「適用除外」を受けなければならない。米国と英国がこれにあたる。


●投資家育成のためのプロ・アマ規制●
プロ・アマ規制を投資家の育成や市場の活性化を視野に入れた観点から考えるべきとの意見としては、「初めからプロはいない」(荒井史男委員=日本商品先物取引協会会長)のだから、「アマが上手になってプロに変われる道すじを作る必要がある。そうしないと市場が育つ土壌ができない」(高井裕之委員=住友商事理事・金融事業本部本部長)との認識が市場関係者側で共通となっている点は心強い。投資家の育成は、産構審の本来の趣旨である国内商品先物市場の国際競争力の強化の観点からも矛盾するものではないはずだ。
ただ、逆にプロからアマに移行することに関しては、渡辺好明委員(東京穀物商品取引所理事長)は「プロとして取引してきた者が、何らかのしくみがあってアマに変えられてしまうというのは奇異な感じだ」と述べ、荒井委員も「よく理解できない」とコメントしている。
何をもってプロとアマを区分すべきかについては、多くの委員が「取引の経験」と「取引意思」を挙げている。特に、渡辺委員は、「ヘッジニーズで取引を始めた人が、スペキュレーションの取引をしても構わない。要は、リスクをとることを理解したうえでの取引意思が重要」と強調し、加藤委員も「投資家の意思は重要」として、意思確認のために委託者から様々な書類をいただいていると受託業務の実態を説明した。
しかし「意思は大事だが、それが自由な意思かどうか、勧誘の影響を見極めるのはむずかしい」というのが池尾和人委員(慶応大学経済学部教授)の意見。津谷委員も、「書類に押印があっても、裁判では個人委託者の自由意思ではないとみんな否定される」と断じた上で、「ハンコを押させてプロ扱いし、勧誘しまくるわけではないだろうと釘を刺しておきたい」と指摘した。
消費者側委員のプロ・アマ規制の根底にあるのは、アマを対象に「不招請勧誘を入れればトラブルの多くは解消できる」(大河内美保委員=主婦連合副会長)との考え。唯根妙子委員(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任理事)もプロ・アマ規制には賛成を表明しながら「アマを(先物市場に)入れないための制度設計をきっちりしてほしい。不招請勧誘禁止は当然で被害が出ないプロの市場を」と求めている。その基本スタンスは、そもそもアマの市場参加を否定している津谷委員と変わらない。
また、大河内委員は「日本人にはそもそも契約意識が希薄」と指摘。「保険でも明らかなように、内容を理解して押印してはいない。日本とはそういう社会」であるから、「その点を考えて制度を作らないとトラブルは減らない」と述べたが、これについて渡辺委員は「米国では、農業者に対するオプション教育を支援している。そうした情報提供をしないと契約概念が育たない」と反論した。

●ガソリンスタンド経営者はプロかアマか●
 一方で、中小事業者はどこまでをプロ、どこからをアマと見なすかという問題がある。
 こうした議論の背景には、今後、石油関連業界が「ベンチマーク(指標)として東工取石油製品市場の価格を利用するようになるだろう」(高井委員)との予測がある。そうした場合、ガソリンスタンド(SS)のオーナーの「買いヘッジ参入」が予想される。そこで危惧されるのが「(SSは)当業者であってもプロではないとの理由で行為規制がかかると、制度そのものが目詰まりを起こしてしまう」(同)ことだ。
またSS経営者がヘッジとは関係ない商品の取引をする場合の措置をどうするかという問題もある。高井委員は「当然、当業者としては認められない」としながら「SSであれば石油製品に限る等の措置をしておかなければまずいのではないか」と提案している。
 渡辺委員は、ヘッジングに関しては、商品を単一の品目に限定すべきではないとの意見だ。例えば「原油・ガソリン・灯油・軽油は同一グループ」であるし、バイオマス・エタノール向けのとうもろこし消費量が増加傾向にあることを考慮すれば、将来的には「とうもろこし相場を見ながらSSの経営を考える時代になる」可能性も否定できない。ゆえに「ひとつ(の商品)に縛らず周辺まで広げたプロ・アマ議論を」と訴えた。
 ただSSがプロかアマかに関しては「アマとしての扱いを受ける場合はある」(久野委員)というのが支配的な意見で、新日本石油常務の平井茂雄委員も「SS経営者はアマ」と断言。「将来、東工取価格を指標化して採用する考え」と高井委員の説明を裏づける発言をしながらも「(先物市場を利用したリスクヘッジ)経験がある経営者が少ない現状」では「SS経営の赤字挽回のために先物市場を利用する」ことの心配を語った。
 これを受け商品先物業界の委員は「知識と経験がない中で取引するのは非現実的」(南學委員)であり、だからこそ「商品取引員による先物市場の有用性説明機会を制限すべきではない」(南學・加藤委員)とした。
 さらに池尾委員はSS経営者のヘッジニーズに対応した商品を「どこかの金融機関が提供するといったことが起こらなければならない」とし、そうした「周辺ビジネスで(市場に)厚みを作ることも合わせて行政が考えなければならない」と発言。渡辺委員も「大賛成」と同調した。

●IBはだれのための制度か●
 商品取引仲介業(仮称)は、米国のイントロデューシング・ブローカー(IB)を想定した、国内では新たなビジネスモデルの提案だ。商品取引仲介業は取引委託の「媒介」行為となるが、媒介業は現在の商品取引所法では禁止されている。
 しかし、取引員が急激に減少する近年、「利用者の商品先物市場への多様なアクセス確保」(主務省)の観点からIB制度の開設が有効ではないかとの指摘がある。
 IBと取次業者の決定的な違いは、取引口座の開設に際して、IBは委託者から資金を預からない点。すなわちIBは契約の当事者にはならないということだが、別の観点からは営業のスペシャリストである「コミッション・セールス」に近い形態と言えばわかりやすいかも知れない。
 そのIB制度に津谷委員は「日弁連としても個人としても反対」で、「企業相手のIBなら考える余地はあるが、個人相手は論外」と切り捨てた。さらに「商品取引員として立ち行かなくなったからIBにすれば規制が緩くなるとの考えも話にならない」と重ねた。
 高井委員はIB制度に賛成の視点から「将来においてポテンシャルのあるSS等当業者相手の制度なら問題ない」としながらも「個人相手はやはり難しいのでは」と指摘。IB制度は「海外では顧客を向いたビジネスをしており重宝されている」と説明した。
 また加藤委員は「リスクヘッジ・ツールを定着させるためにも非常に重要。個人相手の制度ではないのは当然で、ヘッジャーのための制度にすべき」と話した。
 この日予定されていた「ラップ口座」「商取法と海先法における業規制の範囲」ならびに「IB制度」は次回以降、改めて議論する。次回は10月15日開催。
(文責:先物協会事務局)


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