JCFIA速報

2008.11.11 第6回産構審商取分科会、当業者の市場参加推進で期近流動性をめぐる議論

店頭取引は規制緩和でほぼ一致
 
 
 経済産業省と農林水産省は10月29日に今年第6回目となる産業構造審議会商品取引所分科会(分科会長=尾崎安央早稲田大学大学院法務研究科教授)を開催、「透明かつ公正な商品価格形成の推進等について」をテーマに話し合った。議論は大きく、相場操縦など不公正取引への対処を含む市場の透明性向上と、店頭(OTC)取引規制のあり方に関する諸問題に分けて審議された。透明性の問題では、商品取引所の不公正取引に対する対応策が紹介されたほか、消費者側委員による板寄せ取引への誤解に端を発する不公正取引の疑念が払拭された。相場操縦の関連では、当業者利用促進を目的とした期近限月の流動性拡大に向けた取引が相場操縦と疑われないかとの疑問が呈される一方で、白金のように「特殊な原資産」が設定されている商品で「テクニカルなスクイーズ」を危惧する声も上がった。店頭市場の規制問題では、ヘッジ目的以外にも取引を解禁することが意見は概ね一致をみたが、工業品に比べ農産品では「若干厳しい」規制をかけるべきとの意見が出された。また一般投資家向けにはFX取引と同じスキームで貴金属の店頭取引を提供できるようにすべきとの声も上がったが、消費者側委員からは不招請勧誘禁止を前提とすることが提案された。さらに店頭取引の信用力を高める観点から、商品取引所が欧米並みに取引システムや清算を提供すべきとの意見が出された。今後、商品取引所の新たなビジネスとして議論を呼びそうだ。


 不公正取引の排除問題の背景には、店頭取引や商品先物取引の世界的な利用拡大がある。世界の投資市場を縦横無尽に駆け巡る投資資金の増大は、取引所取引間、取引所取引と店頭取引間の裁定取引を活発にしている。だが旺盛な投資意欲の一方で、そうした状況が実需とかけ離れた価格形成や世界の複数の市場にまたがる共通商品の相場操縦など、「新たな類型の不公正取引」を引き起こしかねないとの危惧がある。実際、米国では2001年から08年7月までに、CFTC(商品取引委員会)が相場操縦に関して33件の提訴または行政命令を出している。
 また国内では石油製品の卸値の値決めで東工取の先物価格に連動させる動きが出てきており、市場の公正性を担保する必要性が一層高まっているという認識だ。
 このため主務省は、不公正取引を未然に防止する観点から、@相場操縦等の不公正取引に対する処罰等、A取引所における取引の公正性を確保する体制整備、B外国規制当局との連携強化、C過当数量取引等への対応――などの論点を提示した。

●東工取の不公正取引への対処
 不公正取引の排除に関し南學政明委員(東京工業品取引所理事長)は冒頭、近年、東工取では目視で監視できないアルゴリズム取引が増加しているとの現況を報告した。アルゴリズム取引はプロップハウスやアーケード、ヘッジファンドなどと呼ばれるトレーダーが駆使する先端の売買方法のひとつ。あらかじめ定めた売買プログラムに応じて、数十分の1秒といった間隔で売買注文の発注やキャンセルを繰り返す特徴がある。当然、かれらの取引数量はばく大な市場占有率となってあらわれる。このため潜在的には重要な監視対象となるが、取引の特性から技術的な困難を伴う。
 しかし東工取では2006年に世界の商品取引所に先駆けて最先端の取引監視システム「SMARTS」を導入済み。不公正の疑いがある取引は同システムで抽出の上、実際に問題があれば指導等を通じて対処していると説明した。
加えて不公正な価格形成を回避するため、日常的に建玉制限を見直して適正化する一方、定期的に市場管理委員会を開催して適切な市場運営に努めていると述べた。
 また公正性確保のための体制整備では、商品取引所法に基づいて「第三者の立場から監視する」市場取引監視委員会を設置。同委員会は「東工取の市場運営全般について」問題があれば理事長に意見を提示することになっているとした。
 さらに12月に迫った株式会社化では、委員会設置会社による機関設計を採用しているとした上で、取締役10名中8名を社外取締役とし「透明性と客観性が高い組織運営」を実現するとの方針を語った。委員会設置会社は株式会社の内部組織形態に基づく分類のひとつ。従来の株式会社とは企業の統治制度(コーポレート・ガバナンス)が異なり、取締役会の中に社外取締役が過半数を占める監査委員会等の委員会を置く点が特徴。取締役会が経営監督にあたる一方で、実際の業務は執行役が担当する。

●相場操縦規制と期近流動性向上策
 相場操縦が当業者の市場利用促進を阻害しない用よう留意すべきと指摘したのが高井裕之委員(住友商事理事金融事業本部本部長)だ。
 石油業界はこれまでRIMやプラッツ、Argusといった特定の専門誌等に掲載されるアセスメント価格を、石油製品の値決めのための指標価格として用いてきた経緯がある。しかしここ最近になって、石油業界ではこれまでの「不透明な」(高井委員)価格決定方式から、東工取価格に連動した卸値を採用するようになってきた。こうした東工取価格への傾斜は、出光興産、新日本石油、ジャパンエナジーといった国内元売大手の東工取会員加入となっても表れている。
 当業者が先物市場を利用する際に重要なポイントは豊富な期近限月の流動性だ。当業者にとっての利便性を向上させさらなる市場拡大を図りたい東工取は、是が非でも期近限月の流動性を高めたい考えがある。
 一方、相場操縦は現物の授受との絡みで、期近限月の価格を一定の意図に基づいて動かすことで生じやすい。極端なことをいえば「1年先の限月で誰がどれだけ取引しようがそれは相場操縦ではない」ことになる。このため当業者等が取引の薄い期近限月の流動性を高めようと注文を出した場合には、相場操縦の疑いを持たれかねないというのが高井委員の訴えだ。こうしたことから同委員は「当業者の健全なヘッジ活動を阻害しない制度設計を」と要請している。
 穀物メジャーに所属する佐藤広宣委員(カーギルジャパン穀物油脂本部穀物グループ統括部長)もこの意見に強くうなずく。現物業者が流動性の薄い期近限月に注文を出せば相場は乱高下する可能性が高い。そのたびに「相場操縦を疑われては(市場参加は)難しい」との意見だ。佐藤委員はその上で「当業者が参加しやすい制度設計」を求めるが、同時に相場操縦を防ぐための「建玉制限や仮名口座を防ぐ体制」の整備、さらに「インサイダー的な情報の管理」まで含めたルール作りも必要と言及した。
 しかし相場操縦への懸念はそれだけではない。設計によっては「すぐにデリバリーできない」(高井委員)商品もあるからだ。例えば白金の500グラムバーがそれ。白金それ自体は国内にあっても「500グラムの形状のバーはすぐに手当てはつかない」現実がある。高井氏はそうした場合に「テクニカル・スクイーズ(制度的要因による玉締め)」が起き得ると注意を喚起し、誰でもがデリバリーできるものに変える必要があると述べた。
 ただ高井委員は相場操縦に対する警戒を鳴らしながらも、出来高が減少中のいまの国内商品先物市場で「へたに相場操縦規制の規定を作るとさらなる減少を招いてしまう」との危惧も持っている。

●「向かい玉はない」と言明
 消費者側の津谷裕貴委員(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員)は、取引仕法としての「板寄せ」と「それに合わせて行われているバイカイ付け出し」が、取引の不透明性のもととなっていると指摘した。同委員は「諸外国で行われていない」板寄せは廃止すべきとの意見。また受託会員の売買集計で「売りと買いの枚数が似てくる」のは向かい玉があるためで、それが「客殺しの温床になっている」との自説を展開した。さらに東工取の監視システム「SMARTS」では、向かい玉はどの程度チェックできるかと質問した。
 これに対し南學委員は、東工取はすべての市場でザラバ仕法を採用していること、また向かい玉については「ほとんどないのではないか」とした上で、仮にそうした取引があった場合でも「目視で確認できるためすぐに判明する」と回答した。
 東京穀物商品取引所理事長の渡辺政明委員はまず、同取の一部商品で採用している板寄せ仕法は、「誰がどの節で何枚の注文をいくらで出したのかが明確にわかるうえ、向かい玉は目視で認識できる」ことが特徴と説明した。
また板寄せを廃止すべきとの意見には、板寄が遅れているという認識はまちがいで、ザラバと板寄せにはそれぞれ「一長一短」があるとし、流動性と取引仕法の関係を解説した。東穀取は、東工取が次世代取引システムを導入した際にはシステムを共通化し、結果、全商品がザラバ仕法に移行することになっているが、それは「板寄せ仕法の否定ではない」ことを強調。両取引所の共通会員の多さからくるコスト削減効果の追求が理由であるとした。
 多々良實夫委員(日本商品委託者保護基金理事長)は自ら会長を務める豊商事を例にとり、自己ディーリングでは、見た目は顧客の売買に相対することはあるものの、現実には「顧客の注文に合わせているのではない」と明確に否定した。特に東工取のシステムでは取引担当者ごとに異なる端末から注文を出しているため、ある担当者が企業全体の注文状況を把握することは不可能と説明。その上で「向かい玉はないと考えていただいて結構」と言明した。

●店頭取引の規制緩和は概ね一致
 商品取引所法は従来、商品取引の取引所取引への集中と、それによる市場管理徹底を理由に店頭取引を禁止してきた経緯がある。具体的には「商品市場の類似施設開設禁止(6条)」と「国内取引所の相場を利用した店頭取引の開設を禁止(329条)」がそれだ。
 しかし取引者間の交渉で取引詳細を決めることができる店頭取引は、取引所取引に比べ、取引に柔軟性・弾力性を持たせることが可能。このため当業者のヘッジニーズをより忠実に充足できる面があることなどから、平成10年の法改正では、当業者を相手方とする場合に限定して店頭取引を解禁。ただし対象物品は政令指定物品に限定。届け出制の制約もつけられた。その後同16年にはリスクヘッジを目的とした店頭業者同士の取引も認めた経緯がある。ただし農産物を対象とした取引と、一般投資家を相手とする取引は一貫して禁止されている。
 だが近年は事情が変わってきた。背景にあるのは資源価格の変動率の増大だ。このためヘッジツールとしての店頭取引ニーズは高まり、海外はもとより国内でも取引量が著しく拡大している。またその結果、店頭取引を取引所取引でヘッジするニーズも生じており、さらには店頭取引と取引所取引間の裁定取引も活発化するようになってきた。
 一方で主務省は、一般投資家向けに「商品相場を利用した差金授受取引が行われるようになってきている実態」を把握している。これはいわゆる「ロコ・ロンドンまがい取引」にも関連する問題だ。今年6月の「海外商品先物取引等小委員会」の中間とりまとめでは、店頭先物取引を含む海外商品先物取引等について「不適切な業者を効果的に排除すべき社会的必要性」を指摘。商取法との「バランスを踏まえ」一定の事前規制と行為規制を導入する方向で具体的検討をするようにと書き込まれている。
 こうした点を踏まえ南學委員は、取引所取引に参入しにくい中小業者のヘッジを促進する観点からも、当業者や金融業者の店頭取引は「政策的に推進すべき」と提案した。その際、事業者への規制はヘッジニーズをより充足できるよう「最低限にとどめるべき」と述べた。
 渡辺委員は農産物店頭取引の解禁には「基本的に賛成」としながらも、工業品に比べ「やや厳しい規制を望む」との意見だ。具体的には、対象商品は取引所上場商品に限定のうえ取引参加者はプロとし、取引様態はスワップ取引にするなどの条件を提案した。実際、同委員には中小の食品メーカーや飼料メーカーを中心に「価格変動をヘッジしたいとの具体的な要望」が伝えられている。しかし「受け渡し条件や、証拠金の受け払いに伴う煩雑な業務を回避したいとの理由」で、取引所取引より店頭商品を金融機関から購入したいのだという。
 ただ店頭取引に限らず、中小企業は一般的に、先物取引の機能を必ずしも正確に理解していない側面がある。人材の不足、会計システムの不理解、証拠金等のキャッシュフロー管理の困難、マーケット・ウォッチの不能――などの理由で、結果としてヘッジ不全に陥るケースは少なくない。しかし金融機関が先物取引を利用してヘッジツールに加工の上、店頭商品として提供すればそうした問題はクリアできる。その意味で「店頭取引は広く理解され、利用されるべき」というのが加藤雅一委員(日本商品先物振興協会会長)の考えだ。
 佐藤委員は農産物店頭取引の解禁を含め、商品店頭取引の推進は「ぜひやっていただきたい」と積極的な賛意を示している。同委員は店頭取引を「テイラーメイドでヘッジニーズに合わせて役立てるツール」と位置づける。しかし当業者等の現状認識では、加藤委員に同じく「理解を掘り起こしていく作業が必要」だと考えている。このため提供業者の当業者等への店頭商品の営業には「行為規制の緩和」が必要だと述べた。

●ビジネスを海外に奪われないように
 こうした議論の一方で、店頭取引の信頼性・利便性向上の観点から、商品取引所や清算機関が店頭市場に取引プラットフォーム(価格の付け合わせシステム)や取引の清算を提供すべきとの意見がある。いわゆる「OTCクリアリング」で、海外の有力取引所はこの新たなビジネスを収益の柱として築きつつある。一方で日本の場合、商品取引所の業務は商品市場の開設とその付帯業務に限定されている現実がある。このためOTCクリアリングの提供は法律の解釈または法改正が必要になってくるかも知れない。
 これについて南學委員は「関係者間の強い要望がある」とした上で、国内商品取引所が産業インフラとしてより機能を発揮できるようにするためにも、主務省にはOTCクリアリングが「必要な業務との認識を求める」と指摘。現行規定の付帯業務で「OTCクリアリングが読み切れない場合には法的な手当てを望む」と述べた。
 米国事情に詳しい久野喜夫委員(FIAジャパン理事)はこの問題に関連して、金融危機の引き金になった信用リスク収縮との関連で、いま米国ではクレジット・デリバティブ・スワップ(CDS)のクリアリング・システム作りが早急に進んでいると実情を紹介した。そうした中で日本も「早急に対応しないと米国勢に商売を奪われる」と警戒を促した。
 また高井委員は久野委員の意見を補足する形で、石油などの店頭デリバティブ取引で同様の問題が生じていると指摘した。このため当業者がお互いに店頭市場で取引しながらその取引の清算を取引所の清算機関にかけることが「ブームになっている」と説明。しかしその利益を享受しているのは日本以外の、世界の大手取引所だとした。
次回、第7回の産業構造審議会商品取引所分科会は11月12日に開催される。
(文責:先物協会事務局)


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