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JCFIA速報
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2008.12.11
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第8回産構審商取分科会 国内先物、海先、OTCを一体規制
広がる商品先物ビジネスと悪質業者の排除
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経済産業省と農林水産省は11月27日に今年第8回目となる産業構造審議会商品取引所分科会(分科会長=尾崎安央早稲田大学大学院法務研究科教授)を開催、法改正に向けて、これまでの議論とりまとめについて意見が交わされた。
資料として配付された「とりまとめ骨子(案)」では、「使いやすさ」「透明性」「トラブル排除」の3つの観点から具体的な方向性が示された。商品先物業界にとって最大の関心事である不招請勧誘禁止の導入では、国内商品先物取引については近年の苦情・相談件数が「急減」していることから「その推移を見守る」とし、導入時は適用対象から除外する方向とされた。ただ、依然としてトラブルが頻発しているロコ・ロンドンまがい取引や海先オプションなどへの対処では、現行の海外先物取引規制法(海先法)を商品取引所法に1本化し、海先法の規制対象外の海先オプションや店頭(OTC)取引を含め一体的に規制することとしたうえで、個人投資家を相手方とするOTC取引を不招請勧誘の禁止の適用対象として政令指定する方針が示された。
また今回の分科会では、とりまとめの審議に先立って、全国石油商業組合連合会(全石連)の河本博隆副会長・専務理事を招いて石油業界の事業者から見た商品先物市場と利用に向けた要望などを聞いた。河本副会長は、いま石油業界では東工取の価格連動が始まったことで先物市場について「勉強しないと大変なことになる」との意識が生じているが、商品先物取引のイメージはよくない。リスクヘッジ機能への潜在的ニーズはあるので、中立的な立場の方からもっとわかりやすく説明をしてもらいたいと要望した。
● 東工取価格に無関心ではいられない
中小事業者が利用しやすい商品先物市場構築の必要性がこれまでたびたび議論の俎上に乗せられてきたのは、商品先物市場の活性化と発展だけでなく、国内産業の競争力強化の観点から、中小事業者には原材料価格の変動に伴う経営リスク管理が求められているためだ。河本副会長を招いたのはそうした認識を踏まえ、石油業界の声を聞くことが理由だ。
石油業界が東工取価格に関心を持ち始めたのは、元売最大手の新日本石油が今年7月に、10月1日から卸売価格を東工取価格に連動させると発表したことがきっかけ。背景には卸売価格と小売価格のかい離、さらには卸売価格の透明性を求める声の高まりがあったという。その後、出光も新日石の動きに追随。このため石油業界では東工取価格に無関心ではいられなくなった。
河本副会長は、石油業界では先物取引のヘッジニーズは存在すると話す。また先物取引の「優位性の認識」も育ちつつある。このため全石連の会員からは「なぜガソリンと灯油だけで軽油はないのか」との質問が寄せられることもあると述べた。商品先物業界にとっては喜ばしい話だが、その一方で「正直に言って(商品先物取引の)イメージは良くない」と指摘する。このため「中立的な立場の方」から、先物取引のリスクヘッジ機能を「わかりやすく説明してもらえるチャンスを増やしてもらいたい」と要望した。
また、ヘッジへの関心だけでなく、先物市場からの現物調達ニーズも大きいという。特に今夏のピークを境にして石油価格が下落に転じたことからニーズが喚起された模様だ。石油業界には「過当競争体質」があって末端のガソリンスタンド(SS)は競って販売価格を下げざるを得ない状況に見舞われているため、割安な業転市場や先物市場から仕入れたいという強いニーズがあると説明する。
しかしその場合には2つの問題がある。ひとつは元売との商標権特約契約だ。この契約でSSは元売のブランドマークを掲げて、元売の保証の下でガソリンを売ることができる。しかし契約元売からの仕入れに縛られてしまうため、安い業転市場を使うことができなくなる。このため河本副会長は、特約があっても例外的に商標権に縛られずに手当てができるような法律的な整理を求めた。
もうひとつはタンクの問題だ。SSが埋設している貯蔵タンクの平均的な容量は30?。しかし東工取は受渡単位が50?であるため、個々の社でタンクをもつのではなく油槽所的な施設の整備を要請した。
さらに河本副会長は、商品先物市場に対して石油業界には「価格操作に懸念を抱いている向きがある」とも指摘。それについて問題がないことを立証し懸念を払しょくしてもらいたいと要望した。
●実際の利用こそが理論の実践
河本副会長の話に南學政明委員(東工取理事長)はまず、日本の経営者の中には先物市場を使うことが経営上のリスクと考える向きがあり、その点、使わないことがリスクと考える欧米の経営者とは対照的だとし、「要請があれば繰り返し説明し理解を求めていく」と即答。また価格操作に関しては、東工取では最先端の市場監視機能『SMARTS』を導入し「価格操作がされないよう最善の努力をしている」と答えた。
また多々良實夫委員(日本商品委託者保護基金理事長)は受渡に伴う単位に触れ、中部大阪商品取引所では東工取とは異なり数量が10?のタンクローリー渡しを採用していると説明。このため中部大阪取では小規模事業者を中心に受渡数量が拡大しているという実例を紹介した。
佐藤広宣委員(カーギルジャパン穀物油脂本部穀物グループ統括長)は、受渡は先物市場の重要な機能で「受ける側と渡す側の双方にとってスムースにならなければならない」とし、そのためのルール作りやインフラ整備を急ぐべきだと主張した。
しかし消費者側代表の津谷裕貴委員(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員)は、河本副会長のタンク容量の心配は「現受けを前提としている」が、先物取引での現受けは「ごくまれなこと」であり「理論面と実際に先物取引をする面ではズレがあると感じる」と述べた。これに対して尾崎分科会長は「私にはズレは感じられない」と否定。石油業界の実際の利用こそが「理論通りだとの気がする」と反論した。
ただ石油業界での先物市場利用はまだ端緒についたばかりとの感はぬぐえない。これは石油業界の利用実態を問うた尾崎分科会長に、河本副会長が「われわれから見てヤマっ気のある人が使っている」との認識を示したことからも明らか。本来ならば堅実な経営者への市場利用の広がりが望まれるところで、先物協会は「いままさに『中小事業者等の商品市場利用に関する研究会』を始めた」(加藤雅一委員・日本商品先物振興協会会長)ばかり。同委員は、先物市場の本来の機能であるリスクヘッジ機能などをより発揮させていく努力は不可欠との認識を示した。
●基本認識と3つの課題
商品取引所法の改正を含む制度改革に向けた「とりまとめ骨子(案)」では、前提となる商品先物市場をめぐる環境変化に関して、主務省は、商品先物市場の世界的な構造変化、資源の需給構造変化とそれに伴う価格変動率の増大、国内取引所の流動性低下と事業者のリスク管理促進の必要性を掲げている。
近年のIT技術や金融工学の発達は、それまで取引所で独占的に行われてきた商品先物を含む金融取引のカラを崩壊させたと言われている。それは取引所取引はもちろん、OTC取引の加速度的な普及を実現した側面もある。そして商品(コモディティ)や金融(ファイナンシャル)といった取引分野はもちろん、国境すら超越した取引所グループが形成された。さらにそこではソブリンファンドやプロップハウスに代表される新たな市場参加者が積極的な取引を展開。旺盛な投資資金の移動の前では、国境はすでに無意味なものとなったのかも知れない。
一方でBRICsに代表される新興国の急激な工業化は資源の需給構造を根本から変え、価格変動率を高めた。そうした環境にありながらも、日本では事業者が国内の商品先物市場を利用してリスク管理を実現する様子はほとんど見られない。すなわち国内事業者にとって、産業インフラとしての商品先物市場の役割はますます高じているにも関わらず、さまざまな観点から実態が追い付いていない現実があるといえる。
こうした実態を踏まえ、国内事業者のリスク管理ニーズを十全なものとし、公正な商品価格形成機能を高めるためには、国内商品先物市場に係る整備はもちろん、海外商品・オプション市場やOTC市場を一体とした制度整備が求められる。言いかえれば、諸外国のように、調和のとれた法整備が必要とされるようになってきているとの指摘だ。
しかし現実には、国内商品は商取法、海外商品は海先法、OTC取引に至ってはほぼ“野放し”状態が続いてきた。他方ではトラブル問題がある。このため主務省は8か月に及ぶ議論を整理し、@事業者にとって使いやすく、A透明で、B利用者のトラブルがない商品先物市場の構築――を「とりまとめ案」の課題として提起、さらにそれぞれの具体的見直し項目を示した。
●“商品先物取引業者”の誕生へ
主務省が整理した見直し案は広範にわたるが、商品取引員ビジネスに最大の影響を与えると考えられるのは、これまでまったく別の業種として分類されてきた商品取引員、海先業者、OTC業者の枠組み撤廃だ。目的は国内・海外・OTC取引の調和だが、その手段として提案されているのがOTC取引を商取法の対象とすると同時に、海先法の商取法への一本化だ。これは国内商品取引所の管理と取引所取引への受託業務の規制を主眼としてきた商品取引所法の考え方を本質的に変えるものだ。
日商協会長の荒井史男委員はこの新たな規制の枠組みを「商品先物取引の実態なり形態なりを踏まえたふさわしい規制」と評価、「従来の『商品取引所法』ではなく『商品取引法』という形で総合的な法体系を築きあげていくことは大変結構」だとした。
この新たな枠組みに基づいて取引を受託する業者は、新たに単一の「商品先物取引業(仮称)」として整理される見通しだ。商品取引員にとって重要なことは、改正法に基づく商品先物取引業者としての参入要件が、現行商取法と同様になると想定されるため、既存の商品取引員には「新たな負担を求める必要はない」とされた点だ。つまり商品取引員は海先(オプション)取引やOTC取引といった新たなビジネス分野への進出が容易になるメリットがある。方法によっては取扱商品を急拡大させるチャンスといえよう。
一方でロコ・ロンドンまがい取引や海先取引でトラブルを頻出させていた業者は、実質的に業務の継続が困難になる。これまで「自由に」営業してきたこれら業者が商品先物取引業者となる場合には今の商品取引員に等しい参入規制(許可制)が導入されると同時に、適合性原則に代表される厳格な行為規制が課せられるからだ。
●IBビジネスの登場
また新たな商品先物取引ビジネスでは「取次だけでなく媒介も業務の範囲」として商品先物取引仲介業を認める方向だ。米国で盛んなIB(Introducing Broker)ビジネスの解禁である。
IB(仲介業)は先物取引の営業特化型ビジネスで、過大な資本投下を必要としないのが特徴。商品先物取引業者と契約を結び、当該業者と顧客との受託契約の締結や顧客の売買注文を仲介する。取次業と大きく異なるのは顧客の資金を預からないことで、このため財務要件は極めて緩やかになると想定される。
商品先物取引業者は仲介業者に営業を委託することで固定費を削減できる一方、仲介業者は自分の能力を活かした営業を行うことで能力に応じた収入を目指すことができる。例えば穀物輸入商社でリスク管理の経験を積んだ人間が仲介業者となって、そのノウハウを使って穀物を取り扱う企業にヘッジ・オペレーションを提案するといったことが考えられる。実際に米国ではそうした知見を持って独立開業するIBが少なくない。
この点に関して先物協会会長の加藤委員は「われわれが想定する仲介業者像はファイナンシャルプランナーや公認会計士」との見解を述べている。つまり仲介業者には商品先物プラスアルファの専門性が期待されており、必ずしも個人委託者を相手に投資セールスをするだけではないということだ。
ただ、この仲介業者を「登録制」とした主務省案には津谷委員が真っ向から異を唱えている。同委員は、登録制では現行の商品取引外務員制度と変わりがなく、顧客トラブルを頻発させた海先業者が仲介業者として登録し、認知されることを強く懸念している。このため仲介業者には「司法試験に準ずるようなより難しい試験」を課すか許可制にすべきとの意見だ。しかし仲介業者には現行の商品取引員と同等の行為規制を課し、かつその仲介業者が顧客被害を生じさせた場合には契約関係にある商品先物業者が連帯して民事責任を負うとする考えが示されているため、「登録制のままで良い」(加藤委員)とする意見は妥当といえる。
●プロには「大胆な行為規制緩和を」
新たな商品市場の「使いやすさ」は、「トラブル排除」にも関連するでプロ・アマ規制(規制の柔構造化)において整理されている。
市場の信頼性を確保する上で十全な委託者保護は最重要に置くべき項目だ。この関連から商品先物業者には再勧誘の禁止などさまざまな行為規制が課されているが、それは時として「知識・経験・財産を有するプロ」に対しては過剰に働く場合がある。このためプロに対しては、一定の行為規制を緩和する方向性が提案されている。
考え方としては金融商品取引法のプロ・アマ規制の制度設計と「可能な限り共通した設計」とするもの。ただし金商法にはない商品取引所法独自の概念である「当業者」は別途考慮すべきと注釈が加えられている。
これに関して南學委員は、プロに商品先物市場を用いた活発なリスク管理を促進する観点から「大胆な行為規制の緩和」を求めている。具体的には説明義務の緩和等が想定されるが、この他にも一任運用の解禁なども考えられる。
●商品先物の苦情は急減か激減か
不招請勧誘については、今回のとりまとめでは、政令で指定する取引形態に禁止規定を導入する方向で、その政令指定取引はOTC取引だけを対象としている。海外先物は「トラブルが継続的に拡大する場合には指定を検討」し、商品先物取引は「苦情・相談件数の急減で推移を見守る」として政令指定対象から除外する方向だ。
不招請勧誘禁止規定の導入について津谷委員は、政令指定制と「金商法並み」の運用提案を「よくそこまで決断した」と評価したが、国内商品先物取引への適用について「その推移を見守る」との根拠とした「苦情・相談件数が急減している」との認識には不満を表明している。同委員は、日弁連が主催している「商品先物取引110番」や訴訟件数も減少傾向にはあるとしながらも「急減という感触ではない」と説明。具体的に「110番」には、平成18年度399件、19年度216件の訴えがあったという。
これに対して荒井委員は、そもそも不招請勧誘禁止の検討を付帯決議した国会の議論は国民生活センターに寄せられた苦情相談件数をベースにしていると指摘。その件数は過去5年間で約6分の1になっているため「急減でなければ『激減』という表現以外にない」と切り返した。
これを受けた唯根妙子委員(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任理事)は、国民生活センターなどでは「相談者が先物取引あるいは商品取引であることを理解していない場合には最初から分類できていない」と発言。このため「(相談・苦情の)件数が今回検討されているものの実態とイコールかどうか問題点としてある」とし、付帯決議の根拠となった数字の不確かさを露呈した。
この急減した数字について経産省の小山智商務課長は、国会審議等でトラブル件数として挙げられた国民生活センターのデータ2万件を内容をすべて調べ、その上でその対象を国内先物、海外先物、OTC取引に分類して認識した結果だと説明した。
●継続的課題となった「ラップ口座」
このほか具体的な見直し項目として挙げられたのは、「使いやすさ」では、取引所に係る項目として@証拠金制度の柔軟化(銀行保証の代用)、A兼業規制緩和(金融商品市場の開設など)、B取引所議決権(株式保有)の緩和(内外取引所との連携可能化)、C金融商品取引所との相互乗り入れ、D上場商品の多様化のための制度整備(排出権など)、E機動的な意思決定を可能とする諸規制の合理化(定款記載事項の業務規程記載事項への変更など)――。またプロ顧客への一任売買は商品投資顧問業と商品取引員資格を同時に持つ者に限定して条件付きで認める方向で法律を整備するとされたが、個人投資家を対象としたいわゆるラップ口座は国民のニーズの不明確さや不当な一任売買による被害増加懸念を理由に継続的課題とされた。
さらに「透明性」関連では、多様化している相場操縦行為等に対する規制の整備やそのための海外当局等の情報交換手続き、取引所から規制当局への報告事項の拡充が盛り込まれている。
とりまとめ案に関する議論の最後に、先物協会会長の加藤委員は11月21日の先物協会理事会で決定した「潮流の変化と協会の取組について」を紹介した。内容は商品先物業界が今後目指すべき方向性として、不招請勧誘の禁止について国内商品先物取引の政令指定が留保されていることを踏まえ、今後、業界が一致して悪質営業を排除し、委託者トラブルの「ゼロ化」を志向するとの協会員の行動規範を示したもので、具体的には@「見直そう商品先物市場」キャンペーンの推進、A会員代表者懇談会の開催と協会取組方針の確認、B構造改革等推進委員会の設置――の3本柱が掲げられている。
次回の産構審商取分科会は12月11日開催の予定。
(文責:先物協会事務局)
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