2006.5.18 投機家の役割について

 投機家は、時代を問わず、洋の東西を問わず、評価されることの少ない存在である。先物市場とのセットで議論されるときは、特にそうである。ゴールデンウィーク終盤の5月6日、フィナンシャル・タイムズに、投機家の役割を評価する社説が掲載された。わが国においても、投機批判をしたいという産業界の事情がある。そうしたことに対する反論ともなっているので、紹介しておきたい。
 要約すると、
  • 商品の投機家は人気投票に勝ったためしがない。産業界が、最近の石油価格を投機的活動による上昇とし、銅価格の記録的高値を投機家のせいにするのは別に驚くことではない。
  • しかし、投機家は、自分の資金でリスクを負って将来の状況を我々に教えるという本質的役割を担っている。成功する投機家は、将来の供給不足と高値を予想して先物を買いつけるか、現物を貯蔵するという行動をとる。
  • 今後の更なる高騰を見越して銅を貯め込むヘッジファンドは、銅の需要が最大限に達したときに売却することにより高値への歯止めの役割をはたす。私的利益の追求が社会全体の利益をもたらす典型的例である。
  • 投機は市場操作と同じではない。市場操作は、有害で非倫理的・非合法な行為である。ハント兄弟の銀や住友の浜中氏による銅の買占めは、司法で裁かれる前に、市場が罰したが、市場規律だけに委ねてはいけない。市場アナリストは現在の相場上昇の中で相場操縦が行われることはないと分析するが、当局は情報を得ているのであれば、市場操作の動きをつかんだ場合には、ためらうことなく対抗措置を講じるべきである。
  • 市場の巨大化と流動性の高まり、規制当局の情報収集・管理能力の向上の中で、問題となるのは、不正行為(市場操作)ではなく、不適当(未熟)な売買である。投機の初心者が相場動向に踊らされ高値買いと安値売りを繰り返すことは、価格変動性を増大させ、投資方向を誤らせる。何よりその最大の被害は彼ら自身に及ぶ。
  • 優秀な投機家は、将来に備えた資源の貯蔵、新たな供給源及び代替商品の確保、資源利用の効率化を我々に促す役割を演じる。投機家は、最も評価されるべき技能リストのトップに位置づけられることはないだろう。全く残念なことだ。現在は、かつてないほど有能な投機家が求められているのである。
 わが国においては、かつて、江戸時代では山片幡桃、明治の時代では福沢諭吉が商品取引所における投機を評価し、当時の世論から擁護した。
 明治・大正・昭和の商学者は、取引所を経済の「温度計」にたとえた。先物市場で形成された商品価格が高いといって先物市場を悪者にするのは、外気が熱いといって温度計に責任転嫁することに等しいと苦笑することだろう。
 フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、良い投機は市場で勝者となり、悪い投機は敗者として市場から退出するというケインズの考え方を下敷きにし、良い投機の出現を待望する。



文責:日本商品先物振興協会 秋田 治

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