2003年懸賞論文結果発表
 
・最優秀賞 家森 信善 氏
名古屋大学大学院経済学研究科教授
    「日本経済の構造改革と商品先物市場に期待される役割」 pdf
     
・優秀賞   柴田 慎一 氏 
三晃商事株式会社 法務調査資料室次長
    「福沢諭吉に学ぶ取引所有益論-先達が示す未来の商品先物市場-」 pdf
     
・佳作   中野 聖子 氏  
一橋大学経済学研究科博士課程後期
    「可変リスクプレミアムを考慮に入れた市場効率性テスト」 pdf
 
懸賞論文審査報告 審査委員長 花輪 俊哉・一橋大学名誉教授
 
 今回の懸賞論文の募集は、商品先物取引に関するものとしてはじめての試みであった。従来の狭い研究範囲の中からの助成では、商品先物市場に関する研究を促進するのにどうしても限界がある。研究者の幅を広げることをもくろんだ今回の試みは、その意味で成功であったと考えられる。今後は懸賞論文方式と従来の研究助成金制度方式を組み合わせることにより、より充実した商品先物市場研究が可能となるであろう。

 今回の懸賞論文の受賞者は次の通りである。
  • 最優秀賞  「日本経済の構造改革と商品先物市場に期待される役割」
            家森 信善 氏   名古屋大学大学院経済学研究科教授
  • 優秀賞   「福沢諭吉に学ぶ取引所有益論-先達が示す未来の商品先物市場-」
            柴田 慎一 氏   三晃商事株式会社 法務調査資料室次長
  • 佳作    「可変リスクプレミアムを考慮に入れた市場効率性テスト」
            中野 聖子 氏   一橋大学経済学研究科博士課程後期
 最優秀賞の論文では、現在のわが国の直面する経済構造の改革に、商品先物市場の提供する価格指標が重要であるとの認識から、商品市場に関する諸側面を幅広くまたバランスよく検討されている。商品先物取引のもっとも本来的な機能は価格変動リスクをヘッジする機能であるが、国民経済的な観点では、価格発見機能と資産運用機能がより重要であると考え、その点を実証的に分析し、商品価格指標が金融政策上有益な情報を持っていることを明らかにしている。その他商品ファンドや商品先物業界のトラブル等にも言及し、わが国商品先物市場のよきガイドブックともなっている。その意味で、本論文は質の良い啓蒙アカデミズム論文といえるであろう。現在の商品先物業界では、まだこうした啓蒙的アカデミズム論文が必要とされる段階にある上、従来こうした啓蒙的な論文が得られなかったことにかんがみ、本論文を最優秀賞とした。受賞者にはこの上に立って、さらに深化した商品先物に関する研究に進んでくれることを期待したい。

 次に優秀賞の論文では、日本近代化の先駆けである福沢諭吉による先物取引論(もっとも論と言えるほど体系的なものでもなく、単なる発言とも言えるが、わが国の資本主義勃興期において、すでにこうした発言をしていたことは重要であろう)が紹介されている。また、福沢が先物取引所は社会にとって、「断じて有益無害の存在である」と主張したこと、さらに取引所に規制・弾圧を加えようとした明治政府に対して、日本の資本主義経済の発展を阻害するものとして、経世家という立場から厳しい批判を展開したことが引用されている。とくに「投機」についての福沢の見解は面白い。そうした福沢の先見性を基礎に現在のわが国商品先物業界への提言は的確で説得力がある。とくに商品取引員は率先して業界の地位を高めなければならないこと、およびその上に立った「一任勘定取引」の早期解禁の提唱には迫力を感じた。

 最後に佳作の論文は、本格的アカデミズム論文として評価できるが、内容的にまだ改善の余地があると考えられるので、その修正を待って協会の論文発表誌「先物取引研究」に掲載される予定である。

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