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8.主要な上場商品の特性と価格変動要因

■ 米国産輸入とうもろこしの価格変動要因

とうもろこしは、米国大陸が原産の代表的な穀物です。小麦、コメとともに世界三大穀物として扱われています。
主な用途として、家畜飼料や食用でんぷん(コーンスターチ)、人工甘味料、アルコール等があります。

とうもろこし価格は、主要生産国の生産量に左右されるので、 生産動向を注視する必要があります。
2015/16年度の世界全体のとうもろこし生産量は約9億598万トンと予測されています。そのなかで、米国と中国の上位2カ国の割合が世界全体の生産量の約60%を占めています。
最大のとうもろこし生産国である米国の生産量は全体の36.0%(2015/16穀物年度:予測)ですが、中国やブラジルの生産量が増加しているため、そのシェアは徐々に下落しています。

米国、ブラジル、ウクライナ、アルゼンチン4か国の輸出量の合計で世界の約85%を占めています。
米国の輸出量は、 2012/13年度を除いた10年間ほぼ一定していますが、2011/12年以降ブラジルやウクライナの輸出量が急増しているため、世界全体に占める米国のとうもろこしシェアは徐々に下落しています。

※2012/13年に米国のとうもろこし輸出量が大幅に減少した原因は、米国の穀倉地帯で、2012年7月~8月に発生した70年に1度と言われる大干ばつの影響です。

日本は世界最大のとうもろこし輸入国です。
日本におけるとうもろこしの生産量は皆無に等しく、大半を米国からの輸入に依存しています。
日本でのとうもろこしの消費は、主として家畜飼料と食用でんぷん(コーンスターチ)、人工甘味料、アルコール等です。

米国は世界最大のとうもろこしの生産・輸出国ですが、近年同国内での消費量が増加傾向にあります。国内消費量が増加すると輸出に振り向けられる量が減少して価格が上昇する原因になるため、米国内の消費動向にも注意を払う必要があります。

中でもエタノール向け需要が急増していて、2014/15年度時点で米国産とうもろこしの約4割がエタノール向け需要に振り向けられています。この原因として、米国の環境問題や脱中東・脱石油戦略、農業振興などの観点から石油依存度を下げるために、「エネルギー政策法」を制定してバイオエタノールの利用を義務化したことが挙げられます。

米国ではエタノール向け需要量は、2002/03年度と2015/16年度の予測需要量とを比較すると約5倍に増加しています。

ただし、米国農務省が発表した今後10年間の長期予測では、バイオエタノールの生産量は横ばいとなると見込まれています。バイオエタノールの利用が、今後鈍化するのではないかという予測がされている背景には、①ガソリン消費量減少が見込まれること、②シェールオイルの増産により非石油資源の必要性が後退したこと、③石油産業界からエタノール使用量増加による石油産業の衰退を懸念した声があがったことがあると考えられています。

この他に期末在庫量もとうもろこし価格に影響を与えます。

豊作だと需要量を超えた部分は在庫に回されるため期末在庫量は増加し、凶作だと在庫を取り崩して需要に対応しなければならないため減少します。
また飼料、食品・種子・工業、バイオエタノールなどの需要に対応するため在庫を取り崩すことが原因で期末在庫量が減少することもあります。
とうもろこしの期末在庫量が減少すると価格は上昇傾向となり、逆にとうもろこしの期末在庫量が増加すると価格は下落傾向となります。

2007/08年度~2009/10年度にかけて期末在庫が増加すると、供給過剰が意識され、とうもろこし価格は下落しました。

逆に2010/11年度には期末在庫が減少し、需給ひっ迫が意識されたことにより価格が上昇しました。

2011/12年度~2012/13年度の期末在庫が大幅に減少した原因は、米国で2012年7月から8月に発生した70年に1度と言われる大干ばつにより収穫量が激減したためです。この時期にとうもろこし価格は高騰しました。

CBOT(Chicago Board Of Trade:シカゴ商品取引所)のとうもろこし価格は、日本を含む世界各国のとうもろこし価格に影響を与えます。
米国シカゴのとうもろこし価格(ドル建て)に東京商品取引所に上場しているとうもろこし価格(円建て)が連動する傾向があります。

上図は2013年1月から2016年6月までのシカゴとうもろこしと東京とうもろこしの価格の推移をグラフ化したものです。
東京とうもろこしの価格がシカゴとうもろこし価格に概ね連動していることが窺えます。

日本のとうもろこしは米国からの輸入依存度が高いため、フレート(海上運賃)価格もとうもろこし価格に影響を与える一つの要因となります。

価格変動に影響を与える要因はもちろんフレートだけではありませんが、フレート価格が53.75円から22.00円に下落した2014年1月から2016年4月の間のトウモロコシ価格は、25,690円から21,270円に下落しており、フレートがとうもろこしの価格に影響を与えていることを窺わせる展開となっています。