

1.乱高下とヘッジ
2.納会
3.受渡し
4.仕入れ
5.寒波到来
6.ガソリンスタンド
7.競争激化
8.元売り参入
4.仕入れ
業者からFAXが届いている。
「業転価格は1キロリットル当たり66,000円前後なのに64,000円(ガソリン税込みで117,800円)だそうです」
「末端でも販売が伸び悩んでいるスタンドも多いし、卸業者もダブついたガソリンを早くさばきたいんだろう」
「末端で売れないと、結局、原油が上げていても小売価格に転嫁できませんしね。需要が落ち込むと業転価格も下げることになりそうですし。」
かなり安いので買っておいて損はない。
「100キロリットルまでなら油槽所の地下タンクに入ります」
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「40キロリットルだそうです。支払いはキャッシュ・オン・デリバリー(納品と同時に支払い)です。注文した翌日に配達してもらえるそうです」
「64,000円なら買っておこう。手配してくれ」
「ないですね。灯油は高止まりしています。在庫水準が例年に比べて低いことで、元売りも灯油の玉繰りはタイトなようです。だから業転市場にも安い玉は出回らないです」
「灯油は業転市場でも8万円前後まで上げているからな」
「今年は元売りの灯油の在庫水準も低くて、系列店でも前年比100%までは出荷するが、それ以上はプレミアムをつけるといった話も出ています」
「プレミアムって、どれくらいなんだ」
「何社かで聞いた話では1リットル6円とか7円だそうです」
「そりゃひどいな。そんな値段で仕入れても小売りに転嫁できない。要するに前年の販売実績以上は、元売りの販売店でも自分で手当てしろということなんだな」
「海外の方が高く売れるっていうのは、よく耳にするな」
「でも、輸出して国内の需給がタイトになるようじゃ困りますけどね」
「寒波が来た上、今年のように元売り在庫が乏しい場合は、灯油は系列店でも取り合いとなるそうです」
「その結果、先物市場に買いが入って期近が急騰するケースもあるね」
「先物市場のいい点は、違約でもなければ(受渡しが履行されないこと)買ったら現受けできますからね」
「違約なんてまずないしね。買えば現物は手に入るよ」
「ああ、先物というと“危ない、怖い”というネガティブなイメージが先行するようで、石油業者でも積極的に利用しようという業者は限られているね」
「うまく使えば価格面のメリットは結構あるのに」
「ええ、確かにそうです。先物市場ができて2〜3年は先物のほうが恒常的に業転市場より安くて、我々のような独立系の業者には格好の仕入先でしたね」
「確かに昔とは状況が違うよな」
「ええ、価格の指標性に元売りなども注目するようになって、商社や取引員経由で取引に参加しているようです。この結果、指標性は高まったものの、価格面のメリットが少なくなりつつあることは事実です」
「業転に比べて必ずしも割安なわけじゃないよな」
「以前は80%を先物市場から仕入れている業者などもあったようですが、そこまで先物に頼る業者は減っているようです。それだけ先物市場が指標価格として業界で認知されているということでしょうね」
「確かに業転価格っていうのは相対取引だから、実際の中心的な価格帯は正確にはわからんな」
「その点、先物価格は指標性としては優れているわけですね」
「ええ、そういうケースも多いですね。でも、行き過ぎて、そのあと急落するというパターンも少なくないです」
「確かに先走って買いに走るやつも多いよな。上げるときなんか一気に来るしな」
「本当にそうですね」
「確かにそうなんですが、先物市場は投機筋も入ってくるので、実勢価格以上に買われたり、売られたりします。長い目で見ると、業転価格に比べて安値で仕入れるチャンスは結構あります」
「ただ、夏場に冬場の灯油の価格や需要などは読みにくいだろ」
「長期の場合は、非常に予測が難しいです」
「先物の場合、当限といっても来月の受け渡しなわけだし、さらに長期だと予測は本当に難しいよな。って言うか、そんな先のことはわかんないよ」
「それだけに先物市場をうまく使うのがわれわれの腕の見せ所なわけです。安く仕入れをできなければ、当社にとって先物市場を使うメリットは薄れますからね」
「まったくだ」
「それと、最近は納会が近づくと、当業者の買いから価格が高騰するケースも多いですね。まあ、原油が上げ続けているから仕方がないことですけど」
「まあ、俺が前に大損したようなヘマはやるなよ」
「気をつけていますから大丈夫です」
*国内の石油市場(原油・ガソリン・灯油・軽油)の場合。取引可能期間は上場商品によって異なる。